【IN DJs WE TRUST × I AM DJスペシャル対談】DJ IKU&DJ KOCOが語る日本人DJが海外で戦うために必要なものとは?(前編)
2026年2月13日
DJカルチャーの多様性と魅力を発信するプロジェクト「I AM DJ」。注目のDJたちへのインタビューを通じて、個々のキャリアや哲学、ライフスタイルを深掘りし、記事とショート動画で展開。音楽文化の新たな視点を提供しながら、幅広い層にDJの世界の魅力を伝えていきます。
block.fmがDJカルチャーのリアルな疑問に迫る人気コンテンツ『IN DJs WE TRUST』によるスペシャルコラボレーションが実現しました。
ナビゲーターを務めるのはTJO。そしてゲストには、近年はバンコクを拠点にアジア全域をフィールドに活躍を続けるDJ IKUと、7インチレコードを駆使し世界中のバイナルファンを熱狂させるDJ KOCO aka SHIMOKITAが登場します。

それぞれのスタイルで世界への扉を開き、シーンに確固たる地位を築いている二人が語る「海外進出のリアル」とは? デジタル時代だからこそ考えたいSNS戦略から、世界の現場を見てきたからこそわかるリアル、そして次世代への提言まで。DJカルチャーの最前線に立つプロフェッショナルの貴重な対話をお届けします。
TJO(ナビゲーター)
DJ KOCO aka SHIMOKITA
DJ IKU

横浜での出会い

-

お二人はお互いを知ってもどれぐらいですか?

DJ KOCO aka SHIMOKITA(以下K)

どれぐらい? IKUくんがバイナルでやってる時かな? 何年前?

DJ IKU(以下I)

10年以上前になりますね。

TJO(以下T)

どこで会ったとか覚えてます?

僕の記憶は、BUNTA(DJ BUNTA)がやったバトルあったやろ? どこやったっけ?

I

横浜でやったB.O.M DJ BATTLEかもしれないですね。

※B.O.M DJ BATTLE(2012年7月15日ClubF.A.Pで開催されたDJ BATTLE。IKUはクイックミックスバトルのエキシビジョンでゲスト参加、KOCOはスペシャルゲストDJとして出演)

K

そのときにゲストでね。あれバイナルだったよね?

-

その頃はIKUくんもバイナルだったんですね。

I

そうですね。僕は一方的ですけど、もっと前にKOCOさんのことは知っていました。ディスクユニオンで3,000円以上買うとKOCOさんのミックステープがもらえたんですよね。赤いやつ。あれを2、3本持って、先に名前は知ってましたね。

InstagramとDJ Scratchのフックアップーーそれぞれの世界進出のきっかけ

-

お二人は日本だけじゃなく海外でも活躍されています。どういう流れで海外でDJプレイできるようになったのか、初めて海外に行ったきっかけとか覚えてます?

I

僕の場合は、DJバトルの世界大会(Red Bull Thre3Style World Finalに日本代表として出場)で行ったのが初めてで、それが2010年なんですけど、そこからはしばらく海外でDJギグをする機会はなかったんですよね。

ただその頃からInstagramで動画をアップしていました。15秒くらいしか動画がアップできなかった時代から、結構こだわってルーティンをアップロードし続けていました。世界に行きたいとかそういうことではなかったんですけど、だんだんフォロワーが増えてきて、DMも来るようになって、初めて呼ばれたのが中国かな? 中国からブッキングが来て行ったのは覚えていますね。

-

KOCOさんは?

K

何年前かは忘れましたけど、初めて行ったのは台湾なんですよ。それまでも海外の話はもらっていたんですけど、1人でやっていたし、どうしようとずっと思っていたんです。KRUSHさんと一緒になることがあって、そのときに「絶対に行った方がいい」って言われて、「あ、じゃあ行こう」ってなって。そのときにオファーがあった台湾に行ったのが最初ですね。

僕はInstagramを始めるのが遅かったんですけど、いろいろな偶然が重なってDJ Scratchが日本に来た時にたまたま僕を見て「なんやねんこいつ!」ってなってくれて、フックアップしてくれたんですね。それでニューヨークに呼んでもらって、現地のDJが見に来てくれて、DJ Spinaとかとやるようになって、だったらInstagramを始めた方がいいよって言われて始めたんですよね。

-

それは何年前くらい?

K

それはね、2017年とか。

-

でも割と最近というか、8年前くらいのことなんですね。

タイ移住とバイナルの荷物事情

-

それを経て今はどれぐらいの頻度で海外に行ってるんですか? IKUくんはもうタイに住んでますもんね。

K

住んでるん?

I

住んでます。去年の5月にバンコクのナイトクラブと契約しました。最初はお互いやってみなければわからないところもあったので、とりあえず3カ月の契約で。3カ月やってみて、お互い感触的にも良かったので、じゃあ契約延長をしましょうってことで、少なくても今年の夏くらいまではタイにいますね。

-

そのクラブでレジデントとしてやっているんですか?

I

契約を結んだ会社がバンコクでナイトクラブを2つ経営しているので、毎週末レジデントとして、どちらかに入ってやっています。

-

Instagramとかを見ていると他の国にも行ったりしているじゃないですか? あれは休みをもらって?

I

その辺は結構融通を利かせてくれて、バンコク市内じゃなければやっていいよということなんで、タイでも海外でも全然できます。

-

KOCOさんは最近はどれくらいの頻度で海外に?

K

僕は月1回くらい。立て込んでいる時はずっと行って帰ってを繰り返しているときもあります。

-

何カ国か回って帰ってくるみたいな?

K

それが嫌いというか、帰れるなら帰りたい。後でそういう話になるかもしれないけど、僕はレコードなので持って行く量が限られていて、ずっとその中でしかプレイができないというのがあるんです。なるべくフレッシュにしたいから1回家に帰って、準備してっていうのが……。

-

確かにバイナルでやってればなおさらですもんね。現地でレコードを買い足すみたいなこともあったりするんですか?

K

それはもちろんあります。現地で昼間にレコードを買って、その夜にプレイするというのは結構あったりしますけど、それだけじゃ足りないです。自分のルーティンみたいなのはちょっと置いといて、違う感じでやろうかなっていうので、半分以上入れ替えたりすることもあります。

音楽に集中するためには? 現地のDJやエージェントとの関係性

-

海外のエージェントやブッカーとか、現地のDJとかとのコミュニケーションについてはどうでしょう?

I

その辺は線引きをしたいところもあって、仲良くなりたいし、仲良くなる瞬間もあるんですけど、友達みたいな感覚になりたくないところはちょっとあるんですよね。
今年からエージェントを雇って、一枚挟んだ上でいい距離感を保ってやり取りするようにしています。

-

音楽で盛り上がったりお酒で仲良くなったりはするけども、ビジネスはちゃんとするぞっていう。よりシビアになったきっかけがあったとか?

I

年齢的にも体力的にもいつまでやれるかわからないし、なるべくDJに集中したい。それ以外の時間はできるだけノータッチで、任せられることは任せたいと思って。

-

KOCOさんもあります?

K

あります。僕はもうDJしかできないっす。本当に。何も知らない。今はみんな僕のことを知ってくれているから、細かいことを全部やってくれるので、僕は集中できています。

-

二人ともそこに関しては自分のDJ、音楽に集中することが一番っていう。

K

そうですね。僕はそう。本当にそう。

I

パーティー前に、夜ご飯行きましょうとかもありますけど、場合によっては断りますね。ホテルで仕込みしたいからごめんって。
ただパーティーが終わった後にその街で食べるストリートフードがめっちゃ美味しい。アフターパーティーのストリートフードがもう格別なんですよね。

海外でプレイすることで得たもの

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海外でプレイするようになって視野が広がったなと思いますか?

K

もともといろいろな音楽が好きだけど、いろんな国に行かせてもらうと、その国の音楽はもっと好きになるから、そういう意味ではすっごく広がった。行けるなら行った方がいいと思います。

I

もうすべて変わりますね。海外に行くと「なんて小さな世界でDJしてたんだろう」って思っちゃいますよね。海外のパーティーに呼んでもらったときに、呼んでくれた人だけじゃなくて周りの人も自分のことを知っていてくれるので、知ってもらえているありがたさっていうか、よろこびみたいなのは海外に行かないとわからないところはあります。意外とこんなファンいたんだっていうのよくあるんで。

-

ファンめっちゃ多いなとびっくりした国は?

もちろんタイはそうですけど、ベトナムとか。ウェルカムな感じ。ベトナムでは親しみを込めて「SENPAI(先輩)」って呼ばれていて、タイでは「SENSEI(先生)」って呼ばれています(笑)。

「きっかけ」の理由と準備の大切さ

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お二人のように海外で活動したいDJもたくさんいると思います。海外で活動する際に意識したほうがいい点などのアドバイスは?

I

呼んでもらうってことは、必ずきっかけがあるはずなんですよね。私の場合はSNSで上げている動画のルーティンを生で見たいというのがやっぱりある。
呼んでもらったら「なんで呼んでくれたのか?」を汲み取って、例えばルーティン動画がきっかけなら、そのルーティンをやるみたいなことは意識していますね。
呼んでくれた理由を直接聞けるのが一番いいですけど、聞けなくてもなんとなく汲み取って“呼んでくれた人に対してプレイする時間”を作るっていうか。もちろん目の前のお客さんのためにもプレイするんですけど、そういう時間も作るように意識しています。

あるよね。ブースの裏だけ盛り上がっていたりとか。その時間が結構楽しかったりする。道中、車で話していたアーティストの曲をかけてあげたり。

-

それはよろこばれますよね。KOCOさんはどうでしょう?

僕が海外でやるようになったのは、SNSを始める前だったんですけど、結局僕はいつも準備をしてたの。

-

準備?

そう。チャンスって来るじゃないですか? その時に普段通りうまいことできる準備ができているかどうか。Jazzy Jeffが日本に来た時も、もうずっと横で見てたし、スクラッチもそうだけど、普段通りにできるかどうか。そういう時に、「何こいつ、一緒にやりたい」となればもう勝手に呼んでもらえるようになる。そのきっかけは絶対来るから、その時に準備ができてるかどうかだと僕は思う。

無視できないSNSの広がりとそれでも大切な“現場感”

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二人ともお話にInstagramの話が出ましたが、SNSの影響力について。世界に認知を広げるために意識していることはありますか?

I

僕はそもそもDJのルーティンを見るのが好きで、DJを始めた頃から映像コンテンツは大好きだったんです。最初はそんな影響力はなかったんですけど、それなりにこだわって15秒の中でも起承転結を考えてちゃんとオチまでつけて撮影していたんですね。そのうちにいいねの数が増えてきて、世界中に拡散されていって、SNSってすごい!って後から気づきました。

-

Instagram以外にもTikTokとかYouTubeとかは?

I

ほとんどやってはないんですが、最近はInstagramに投稿するものはFacebookにも上げていて、ものによってはTikTokにも一応上げるって感じですかね。

-

メディアによって反応が全然違うんですか?

I

違いますね。InstagramでウケたものでもTikTokでは全然ウケなかったりとかもしますし、InstagramでボチボチだったものがTikTokで跳ねたりとかもあって。違いを分析しようとしたこともありましたけど、もうわかんない(笑)。もう当たればいいやぐらいな感じで上げていますね。

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流行りのものをやってみようとか、マーケット狙ってというより今自分がやりたいルーティンを見せるみたいなことが優先?

I

根幹にはそれがあって、でも流行りの機材や曲を使って誰よりもヤバイことやりたいっていう気持ちは常にあるんで、そこももちろん狙ってはいますね。ワードプレイでも何でも、今はすぐ真似されてしまうので、トレンド的なところは先に出せるように常に意識はしてます。

-

これってKOCOさんも同じような感じですか?

K

僕はInstagramしかやってないんですけど、最近よく「TikTokでよく見ます」って言われるんです。「やってないし」みたいな……。誰かがアップしているんだと思うんですけど、そういう意味ではSNSってそういう広がりもあるのかなとか勝手に思ってますけど。

-

KOCOさんはどれぐらいのペースでルーティーンをアップしているんですか?

K

今日も家を出る時にポストに入ってましたけど、結構な頻度でみんなが新譜を送ってくれるんですね。僕が気に入ったレコードはなるべく紹介したいと思うし、普段のプレイの中でも面白いのができたらアップしています。マネされる前に自分で上げとこうかなみたいなのも若干もあります。

自分で言うのもなんですけど、“僕みたいな人”って意外に多いんですよ。だからそういう人のためにも「こうやってやるんやで」みたいなのは最初の頃はありましたけど、今はあんまり考えてはないですね。いいのできたら上げようかなと。あとは現場でいい動画があったらもらってアップする方が雰囲気が出るので、それはやってるっすね。

世界を目指すには「なんでもいいから一番に」「結局はDJプレイでカマすこと」

-

若いDJが世界を目指す上で、必要なマインドとかあったら教えてください。

K

僕の持論ね。僕はどんなところでも一番になればいいと思ってる。僕は7インチレコードでDJをやるんですけど、自分で言うのもなんだけど、7インチDJだったら結構いいところにいると思う。

学校では数学が好きで、社会とか国語はまったくできなかったけど、それだけは一番になりたかった。ずっとそういうふうにやって来ているから、何でもいいから一個一番があれば、そのコミュニティが小さかろうが大きかろうが、そこに需要ができて、それでいいって僕は勝手に思ってる。

I

海外に出て改めて思うのは、与えられた場所と時間で、DJプレイでカマせばそれ以外のことはなんとかなるってことですね。英語しゃべれなくても、もちろんタイ語がしゃべれなくても、DJプレイがヤバかったらみんな助けてくれる。自分がタイで契約までこぎつけて今もやれていることを考えると、そこだけは絶対ブレないようにしたらいいかなと思いますね。

(text by Kazuki Otsuka)

後編に続く→

DJ KOCO aka SHIMOKITA

HIP-HOP DJ/バイナル・ディガー。東京・下北沢を拠点に、7インチレコード(45’s)を中心としたDJプレイで世界的評価を獲得している。「7インチのみでのプレイ」がDJ Scratch、DJ Spina、Jazzy Jeffら海外の有名DJから注目を集め、一躍世界的DJの仲間入りを果たした。国内外のクラブ・フェスティバルに多数出演。海外ツアーでは米国・欧州・アジアを巡り、ニューヨークやラスベガスなどでもプレイしている。2025年には RECORD STORE DAY JAPAN のアンバサダーに就任し、45trio とのコラボレーションによる7インチ・シングルをリリースするなど、DJとしての枠を超えた音楽制作活動も進めている。

DJ IKU

ターンテーブリスト/DJ。世界的なDJバトル『DMC World DJ Championships』日本代表や『Red Bull Thre3Style』など主要コンペティションでの優勝、上位入賞を果たし、そのテクニックと卓越した音楽表現で早くから注目を集める。スクラッチとジャグリングを中心に、ジャンルを横断する選曲センスと構成力は、世界的にも高く評価されている。SNSを通じてグローバルな認知を獲得、近年ではNHK紅白歌合戦への出演など多方面の音楽現場に関わる。2025年からバンコクを拠点にレジデントDJとして活動するなどグローバルな活躍を加速させている。

TJO

DJ・音楽プロデューサー・ラジオDJ。日本国内のパーティ/クラブシーンの最前線で活躍しつつ、ラジオ番組やプレイリスト、メディア出演を通じてDJ文化を広く伝播するキュレーターでもある。block.fmのレギュラー番組『IN DJs WE TRUST』をはじめ、InterFM、FMヨコハマ、bayfmなど複数局でDJ/パーソナリティとして活動。ULTRA JAPAN や国際イベントからローカルパーティまで、多彩な局面でのプレイ経験を持ち、現場の価値と視聴者の体験を同時に拡張する立場から、日本のDJカルチャーの広がりを発信している。

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