【IN DJs WE TRUST × I AM DJスペシャル対談】DJ IKU&DJ KOCOが語る日本人DJが海外で戦うために必要なものとは?(後編)
2026年2月13日
DJカルチャーの多様性と魅力を発信するプロジェクト「I AM DJ」。注目のDJたちへのインタビューを通じて、個々のキャリアや哲学、ライフスタイルを深掘りし、記事とショート動画で展開。音楽文化の新たな視点を提供しながら、幅広い層にDJの世界の魅力を伝えていきます。
block.fmがDJカルチャーのリアルな疑問に迫る人気コンテンツ『IN DJs WE TRUST』によるスペシャルコラボレーションが実現しました。
ナビゲーターを務めるのはTJO。そしてゲストには、近年はバンコクを拠点にアジア全域をフィールドに活躍を続けるDJ IKUと、7インチレコードを駆使し世界中のバイナルファンを熱狂させるDJ KOCO aka SHIMOKITAが登場します。

それぞれのスタイルで世界への扉を開き、シーンに確固たる地位を築いている二人が語る「海外進出のリアル」とは? デジタル時代だからこそ考えたいSNS戦略から、世界の現場を見てきたからこそわかるリアル、そして次世代への提言まで。DJカルチャーの最前線に立つプロフェッショナルの貴重な対話をお届けします。
TJO(ナビゲーター)
DJ KOCO aka SHIMOKITA
DJ IKU

踊りに来る海外と見に来る日本? オーディエンスの反応の違い

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前編では海外でのリアルについてお話を伺いましたが、日本と海外でオーディエンスの反応の違いってあります?

DJ KOCO aka SHIMOKITA(以下K)

めっちゃあるっすよ。例えばアメリカだったらアメリカの、スペインだったらスペインの音楽をかけるでしょ。ブラジルだったらブラジルの音楽をかけるでしょ。ってなると、合唱するんすよ。だからクイックでやろうかなと思ってたけど、めっちゃ歌ってるからとりあえず歌わしとこうかなみたいな感覚はあったりします。 反応は全然違いますね。海外は純粋に楽しみに、踊りに来てる人が多いかな。日本人は見にくる人が多いかな。

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技とかスキルとか。

K

そうですね。

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IKUくんはどうですか? 今はタイに住んでるから以前とはまた違うとは思いますが。

DJ IKU(以下I)

タイに来てから純粋に踊りに来てる方たちにアジャストをする時間はありましたね。それまでは常にゲストで行っていたので、やりたい放題やってもOKみたいな空気がありましたけど、レジデントになった以上、少しこうアジャストしている感覚はあります。

タイ以外のお客さんの反応でいうと、自分がカマした後に声をかけてくれる人の多さがすごかったですね。Bastid's BBQ Toronto(DJ Skratch Bastidが主催するフェス)でトロントに行ったときは、1日目にプレイして、手応えあったんですよね。その日もいろんな人が声をかけてくれたんですけど、普通に遊びに行った2日目でもおかわりの声かけがあって。

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最高ですね。

だから良かったらいいよね。ダメだったらほんまにダメっすよ。たぶん。知らんけど。僕はダメな時はないから(笑)。もうその人が誰だろうが関係ないよね。有名だろうが有名でなかろうが。

TJO(以下T)

本当にもう実力主義。

だと思います。

クリーンでスムースな日本人DJの強みと……

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そのシビアさの中でやられているってことなんですが、日本のDJが海外のDJからどう見られてるかとかってありますか? 日本のDJの強みとか。

I

私が主に活動しているアジアではもう「日本のDJ=うまい」っていう、先入観みたいなのはありますね。先輩のDJが切り拓いてくれた結果だと思いますけど、最初からちょっとハードルが高い状態で見てくる。「日本人DJが来た」みたいな。

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KOCOさんは日本人DJについては

K

日本人DJは、めっちゃ上手だと思います。丁寧だし。そこは全然違う。ただ裏を返せば、もうここは別にガシャガシャボンでもいいやんみたいなときでも、なんか決まってるのかなみたいなプレイになることも多い。どっちがいいとは言えないけど、丁寧だし、スムースだし、クリーンなのは強みだと思います。

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日本と海外でDJをやっていて、現場的にそれぞれの良さ、違いみたいなものは何かありますか?

K

違いは僕はそんなに感じないかな。もう今は日本も外国人のお客さんが多いんで。日本人はちょっと引っ込み思案なところがあるけど、誰かが先頭に立てばそういう空気になるし、それを僕らが作れるかどうかというのはあるけど、そんなに違いは感じないかな。

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アジアでも同じこと言える?

I

違いで言うと、今私が住んでるタイは大体3時半ぐらいでパーティーが終わるんですよね。その点は、体力的に楽かなってちょっとありますよね。朝まで乾杯みたいなのはないので。

K

日本だけよね。聞いた話によると、朝までやってるのは始発が動くからなんでしょ?向こうは基本的に2時くらいでお酒を売るのが終わるので。

I

年を取れば取るほどひしひしと。最近は、次の日も午前中には起きてますもんね。健康的な生活を取り戻しつつあるタイライフ。

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素晴らしいですね。タイはいいぞと(笑)

I

日本の現場は言語的な面も含めて、細かい確認が最後までできるところはいいですよね。

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そのクラブでレジデントとしてやっているんですか?

「そこにレコードがないと」「捨てる勇気」セットリストの準備

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海外でプレイする時のセットリスト、選曲はどこまで想定して持っていきますか?

K

レコードだけだから。家を出るまでが勝負よね。持っていったレコードの中で組み替えることはあるけど、そこにレコードがないと。やべぇ家に置いてきちゃったってなるともう終わるんで。僕は準備が一番大切。

T

IKUくんは、さっきもありましたけど、もうホテルを出る瞬間まで組みたい。

I

ギリギリまで組みたいですね。心配症なので。90分のDJプレイで300曲くらいは用意して、パーティ用のクレートの中に入れて、どの角度からでも対応できるようにしています。

もちろんその自分のセットは7、8割は決めておくんですけど、BPMで変わるかもしれないので、プラスアルファで200曲は用意して。

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ルーティンもたくさんあるでしょうし、用意した曲は全部かけたいなぐらいの気持ちは本当はあると思うんですけど、今日はこれはやめておこうみたいなジャッジはどこでするんですか?

I

さっきKOCOさんもおっしゃってましたけど、歌われ出しちゃうと、もうここはもうルーティンをやらずにそのままみたいな時もありますし。

僕は、DMC(World DJ Championships)の90秒とか3分、6分でセットを組んでDJバトルをする世界でセットを組んできた人間なので、最初は抵抗がありました。1時間とか90分のプレイで、「捨てる」作業がなかなかできなかったんです。最近は「捨てる勇気」が持てたので、やらない時はもうやらないみたいなジャッジは体感でできるようになってきました。

「誰でも今日からDJ」時代の功罪

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ここからは、DJカルチャーのこれからについて聞いていこうと思います。DJがより気軽に始められる時代になりました。良い面、悪い面、それぞれどう思いますか?

I

もう今日から君も私もDJだっていう時代。裾野が広がるという意味ではいいことかなとは思いますけど、ただDJ自体がイージーなものとして世間一般に認知されちゃうと、職人技のすごさ、深みみたいなところが伝わらないまま、掃いて捨てるほどいるみたいな存在になっちゃうっていうのが懸念としてあります。

簡単に始められるけど突き詰めたら簡単にはできない職人技なんだよっていうことを伝えていかないとだめかなと思いますね。

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IKUくんはスクールの先生もやってるじゃないですか。IKUくんに習いに行く人は、それなりの音楽知識、技術をしっかり覚えようという熱量高い人が多いイメージがあるんですけど。

I

機材買うところからというビギナーの人が来ていた時期もありましたけど、最近は熱量高い人が来るようになっていきましたね。YouTubeとかもあるので、検索すればある程度できるようになってきていて、自分はそこに時間使わなくてもいいかなと思って。

バンコクで新しいDJスクールをオープンする予定があるんですけど、そこはハイクラスのDJ、大会に出るようなDJとか、もうすでにDJをやっているけどさらに上に行きたいというDJだけに教えるクラスで先生しようかなと思ってます。

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流行もあって、バイナルDJも増えているんですか?

K

そうですね。僕はバイナルだけですけど、デジタルに行った人でもバイナルをやってる人は結構いるかな。バイナルしかやらないDJはたぶん日本人だけかもしれないです。だいたいバイナルもやるけどデジタルもできるし、CDJもできるし、どれにでも対応できる人が多いから。

-

確かにそんな気がしますね。仕事に合わせて使い分けている。

バイナルDJとデジタルDJの魅力

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先ほどからずっとお話にも出てきていますが、バイナルDJとデジタルDJ、それぞれの魅力について。ちなみにKOCOさんは、デジタルでDJをやったことは?

K

ないっす。まったくないです。わからないです。

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そうなんですね。では違いについてはIKUくん、どうですか?

I

KOCOさんもそうですけど、バイナルDJがカッコいいなと思うのは、ボーカルが入ってくるまでの、ドラムだけのところとかメロディだけのところも楽しめるのがすごくいいなと思います。“間”を楽しむことができるのがバイナルDJなのかなと。

デジタルでも実際やろうとしたらできるかもしれないですけど、デジタルはもう矢継ぎ早に美味しいところだけをかいつまんで、ボディの部分というか、“間”の部分をなかなか味わえないなという印象はありますね。

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逆にデジタルのいいところで言うと?

I

表裏一体で、矢継ぎ早に美味しいところをっていうのはありますし、容易にジャンルを飛び越えられるところはデジタルの良さかなと思いますね。

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デジタルになってぶっ飛んだDJができるようになったなという感覚はありますか?

I

そもそもその自分がデジタルのDJを始めて初めて出た大会が『Red Bull Thre3Style』だったので、ルール上3ジャンル以上使わなきゃいけなかったので、その時にクロスオーバーなDJスタイルを叩き込んだというか。

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バイナルDJでいうと、海外での需要はどうなんですかね? レコードはやっぱり人気がありますか?

K

あるっすよ。来週もニューヨーク行くんすけど、それもレコードバーができるのに合わせてそこに行くって感じなので。

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バイナルの売上がめちゃめちゃ上がってるみたいな話とか、肌で感じるものはありますか?

K

僕が思うことなんですけど、昔はDJの人が買ってたイメージがあるんですけど、今はリスニング用に買う人が増えたイメージはあるっすね。リスニングする人の方が圧倒的に絶対数が多いと思うので、その需要は伸びてるとは思いますね。それとは別に、バイナルDJの需要も、僕はあると思います。

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IKUくんも好きな曲をレコードで買ったりするとかありますか?

I

それはないですけど、タイにもレコードバーが最近できたりしていて、そこに行ったりはしてますね。

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両方経験しているIKUくんにお聞きしたいんですけど、今後どう進化してくのか、逆にこういうふうになってほしいなみたいなことってあったりしますか?

I

手作業の部分はずっと残って欲しいなっていうのはありますね。全部手作業ではあるんですけど、例えば最後にリリースする瞬間はボタンじゃなくて手で出すとか。そういうところはなんか残っていってほしい。もうジジイみたいな発言ですけど。

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いやいや、それは大事。

I

そういう所作がかっこいいなと思って始めた部分もあるんで、そこは残していきたいし、残せるように自分もAIに乗っ取られないようなプレイをしたいなとは思っています。

今20歳だったら何を選ぶか?

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例えばなんですけど、今自分が20歳だったら何を優先的に始めるか、今だったらこうしてたなみたいなことはあります?

K

自分が20歳の時と同じだと思う。好きなことをやると思います。今でもそうだけど、僕は好きだから続けてるっていうか、全く苦じゃないっていうか、それがあるからできるから、好きだったらやればいいと僕は思う。

I

今は情報源も多いし、選択肢がちょっと多すぎますよね。その中で20歳だったらもう無我夢中になったものだけやっているかもしれないですね。尖って。30手前まで尖ってたんで。

K

今でも尖ってるやん(笑)。でも大事よね。

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IKUくんは割と早い段階からInstagramに取り組んでいたから、今だったらSNSも同時にがんばるみたいなこともあるのかなと思ったんですけど。

I

冒頭から散々Instagram、SNSって言ってますけど、“Instagram DJ”にはなりたくないんですよね。みんな切り抜きの一番いいところだけを上げてるから、「ナイスパーティーだった」「盛り上がってた」みたいに錯覚するけど、実際は90分、1時間でちゃんとメイクできたかどうかも大事ですよね。

あと、家でルーティンだけをずっと上げているDJもあんまり好きじゃないんですよ。ルーティンだけなら何回も取り直しきくので、自分はそうじゃなくて現場でメイクしてる瞬間をなるべく上げたいなと思って、そこは気をつけています。現場でちゃんとメイクしてる動画も見たいなみたいな。

K

“SNS DJ”みたいなのも多いと思うけど、そこの見極めはもう見てる人はわかるもんね。

DJカルチャーの未来に向けて

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2026年が始まりましたが、未来に向けてDJカルチャーをどう盛り上げていきましょう?

I

僕は結構言っているんですけど、“DJ枠”でDJをやっているだけだと、DJとしてしか見られないの。

フェスに出させてもらうことが多くなってきているんですけど、日本のフェスだと「DJゾーン」みたいなのがあるじゃないですか? それは僕らにとってもうれしいことではあるんですけど、海外のフェスだと、バンドのステージの後に僕がやったりするんですよ。

前のステージで10人くらい出ているのに、次は僕一人だけとかあるんですけど、海外はそういうことが結構あるんです。

DJもアーティストとして見てもらえるようになったら、日本でのDJの見られ方、みんなの見る眼も変わってくるんじゃないかと思います。

I

私は何かを背負ってプレイしてるとか、日本の未来のDJシーンをこうしたいっていうのはあんまり考えないようにしています。日本人が過去に誰もやったことがないような動きをしていれば、それが勝手にその次の世代の道標にもなるし、選択肢にもなる。もうまずは自分ががんばると。誰かが自分を参考にして「こういう道もあるんだ。IKUくんみたいな道もあるんだ」ってなって、選択肢が一つでも増えればいいかなと思っていますね。

DJ KOCO aka SHIMOKITA

HIP-HOP DJ/バイナル・ディガー。東京・下北沢を拠点に、7インチレコード(45’s)を中心としたDJプレイで世界的評価を獲得している。「7インチのみでのプレイ」がDJ Scratch、DJ Spina、Jazzy Jeffら海外の有名DJから注目を集め、一躍世界的DJの仲間入りを果たした。国内外のクラブ・フェスティバルに多数出演。海外ツアーでは米国・欧州・アジアを巡り、ニューヨークやラスベガスなどでもプレイしている。2025年には RECORD STORE DAY JAPAN のアンバサダーに就任し、45trio とのコラボレーションによる7インチ・シングルをリリースするなど、DJとしての枠を超えた音楽制作活動も進めている。

DJ IKU

ターンテーブリスト/DJ。世界的なDJバトル『DMC World DJ Championships』日本代表や『Red Bull Thre3Style』など主要コンペティションでの優勝、上位入賞を果たし、そのテクニックと卓越した音楽表現で早くから注目を集める。スクラッチとジャグリングを中心に、ジャンルを横断する選曲センスと構成力は、世界的にも高く評価されている。SNSを通じてグローバルな認知を獲得、近年ではNHK紅白歌合戦への出演など多方面の音楽現場に関わる。2025年からバンコクを拠点にレジデントDJとして活動するなどグローバルな活躍を加速させている。

TJO

DJ・音楽プロデューサー・ラジオDJ。日本国内のパーティ/クラブシーンの最前線で活躍しつつ、ラジオ番組やプレイリスト、メディア出演を通じてDJ文化を広く伝播するキュレーターでもある。block.fmのレギュラー番組『IN DJs WE TRUST』をはじめ、InterFM、FMヨコハマ、bayfmなど複数局でDJ/パーソナリティとして活動。ULTRA JAPAN や国際イベントからローカルパーティまで、多彩な局面でのプレイ経験を持ち、現場の価値と視聴者の体験を同時に拡張する立場から、日本のDJカルチャーの広がりを発信している。

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